はじめに
面白そうな本を書店で見つけた。
- 作者: せきしろ
- 出版社/メーカー: 文響社
- 発売日: 2016/10/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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たとえることは自分にとって作詞スキルに関係する程度しかない。小説を書くわけでもない。
本書は「たとえる」ことだけにフォーカスを当て、たとえるテクニックと、たとえる効果が語られている。これを読んだからと言って比喩表現がすぐにあがるわけではない。ただ、この「たとえる」こととは何なのか、を考える機会が欲しかったので読んでみた。
本書では冒頭に「たとえたほうが良い理由」、「たとえを作るために必要な視点の紹介」、「実際にたとえを使う例」という流れで構成されている。最後のたとえを使った2ページの文章が想像力を掻き立てられ、たとえることの効果を証明しながら書かれていて二度美味しい。
たとえることは、より鮮明に伝えること
たとえることは、伝えること。僕はこの本を読んで感じました。
伝えることはコミュニケーションの根幹であり、我々が生きる上で避けてはいけない問題です。今も僕はブログを通じて、言葉を使って、この本を読んで考えたことを伝えています。
なんのためにたとえるのか。それはより「鮮明」に伝えることです。「正確」に伝えることではないことに注意しましょう。何もたとえないよりも真実に近づき、イメージを共有しやすくなり、より正確に近づくかもしれませんが、絶対に正確にはなりません。イメージといった通り、より「鮮明」になる。聞き手が描きやすくなることから、鮮明という言葉を使いました。
正確性を求められる技術文章とは、かけ離れた存在でしょう。しかし、会話するとき、自分の体験をより鮮明に相手に伝えるためにはたとえることが助けになります。
たとえることは、より鮮明に伝えること。これに気づけたことがこの本を読んで一番大きな収穫です。
日常会話における「たとえ」
日常生活ではどんな場面でたとえる必要性があるでしょうか。事実の報告が求められる仕事には向かないでしょう。「夏休みが終わるのに宿題一切手をつけてない小学生の心境ぐらい進捗やばいです」なんて言っても確かに解決の困難さは伝わりますが、「で、どれぐらいやれば終わるんだ」を知りたいに決まってます。
やはり、体験の共有をする場面でしょうか。「駅前に新しくできた定食屋さんに行ったんだ。「どんな店?」「定食の種類が8種類あって充実していたよ。味はよくあるチェーン店の定食屋と同じぐらい。店の雰囲気が地元の商店街にポツンとあっておばちゃんがやってる定食屋のようで落ち着いたよ。」なんていうと(それぞれの体験における)商店街の定食屋を浮かべながらその店を解釈するでしょう。
文章で何かを伝えるときもたとえは必要です。「ブログを書くととても良いですよ。」「どういいの?」「考えついたことを文章化すると、今まで曖昧なままぐるぐるまわっていたことが明確になる。そのことでまた新しいことを考えられるようになる。常に溜まりっぱなしの食器を見ると次に洗う気がなくなるから、毎回片付けたほうが気持ち良いのと似ているよ」なんていうと「あぁあの感覚か」と伝わる。
お互い知らないフィールドで働いているとき、どんな仕事をしているかを伝えるには、相手が知っていることで例えるとイメージしやすくなる。看護士に対してソフトウェア開発を伝えるときに患者の記録をパソコンに入力するでしょう、と言ったり、もっと一般的に銀行のATMを使うときに金額を計算する何かが裏にいてね、なんて言うことができる。
本書で登場するたとえにはくどいものもあるし、小説の表現みたいに日常会話でする必要はないかもしれない。だけど少しオリジナリティを足すことで自分の言葉になるって素敵でしょう?
おわりに
表現力、説得力に「たとえる技術」を使うことが有効だということに気づくことができました。これからも何か物事を伝えるときにたとえることができないかを考えたい。
今年の読んでよかった候補です。