ツナワタリマイライフ

日常ネタから技術ネタ、音楽ネタまで何でも書きます。

なれる!SE3 から技術ネタまとめ

kindleを購入してからなれるSEを読んでます。ハイライト機能で技術ネタを記録してあとから引っ張る、便利やねー

「そういえばあんた達訊いてたわよね。『新規手配するファイアウォールにセッションフェイルオーバーの機能は必要ですか』って。あんなのRFPを読み込めば一発で分かる話じゃない。22ページ目、項番4─2【機器調達について】。『新規調達する機器は全て現行機器と同等かこれを上回るスペックとすること』、この前提で巻末のプロダクトリストを見れば現行ファイアウォールは×××─×─ELU──冗長用の拡張ライセンス付。つまり新規機器についてもセッションフェイルオーバー機能を持たせるべきってことが分かる。客に確認する必要なんてないわ」 「………」 「あと何? リモートアクセスはSSLかPPTP、どちらの方式で実現しましょうだっけ? 要件の中に『ホテルのインターネット接続などVPNパススルーがサポートされていない環境を考慮すること』ってあったでしょ。この時点でパススルーを必要とするL2TP・PPTPはありえない。SSL─VPN一択よ」

セッションフェイルオーバー、まぁセッションを途切れることなく切り替え継続することでしょうか。SSLはともかくPPTPはポイントツーポイントプロトコルのこと。パススルーというのはなんのことなんだろうな…

「いい、今回のネットワークはSTPとHSRP、OSPFの各タイマー値をギリギリまでチューニングし、障害時及び復旧時のダウンタイムを最小化するよう設計されているのよ。もちろんスパツリはRSTP、ポートの用途に応じてきちんとportfastやbpduguardも入れて──」

STPとHSRPはL2、L3の冗長化プロトコル、なのでタイマーは生存監視の時間かな。OSPFはルーティングプロトコル。つまり何か障害が発生したときに経路切り替えやルーティングテーブル再配布を調整して再配布する時間を最適化していると言ってますね。RSTPはRapid STPだそうです。

「JT&Wもネットエフェクトも既にDRのサービスを持っている。おそらく今回の提案にもそれを使ってくるはず。だとしたら彼らのサービスにないオプションを提案したら、うちの独自性が打ち出せるんじゃない? たとえばバックアップサイトの一部機能をクラウド上に構築しちゃうとか」 「はっ、そんなのJT&Wだってコスト見合いで考慮してくるに決まってるじゃないですか。だいいち今回の提案スコープはDCファシリティ、ネットワークインフラまででしょう。サーバ部分がない状態でどうクラウドのメリットを打ち出すんですか?」 「だから物理サーバの台数が減ればラックや電源、スイッチポート数を削減できるでしょう。結果的に費用が圧縮できるじゃない。そんなことも分からないの?」

DR、ディザスターリカバリーで災害対策のこと。自分のいる部署でもこの開発は行われているのでよく聞く言葉です。メインに対してサブ(バックアップサイト)を作っておいて災害時に瞬時に切り替えることですね。ここでは切り替え先の環境を自社でなくクラウド…つまりクラウド事業者の持つデータセンタに置くと言ってるみたい。

「知ってる? JT&Wって案件の実働部隊に正社員はほとんどいないの。契約社員や協力会社、派遣に業務委託。一度なんてプロパーのまったくいないチームに配属されたこともあったわ」 「まさか」 「本当よ。まったく笑っちゃうわ、何が世界有数のソリューションプロバイダよ。単なる人売りの総元締めじゃない。正社員がガバナンスを放棄してるから、派遣会社も高をくくって更に孫請けのエンジニアを引っ張ってくる。多重派遣と偽装請負だらけで誰がどこの社員かも分からない。狂ってるわ。……でもそれが今のこの業界の実態。大手企業の内情よ」

まーIT業界の構造をうまいこと言ってますね、ええ。プロパーだ下請けだって話はこの世界にいれば聞きたくなくても聞きますが、仕事を投げるだけの会社がいるのは事実。(過去のパイプで受注して技術面は下請け)それでも技術屋なら、室見さんが言うように投げてはならんと思います。たとえそういう立場だとしても、自分が技術を使うことをしないとどんどん衰えていくだろうなあ。


第3巻はRFP、提案してコンペで勝つというシーンを描いてましたね。いよいよ室見と主人公の立場が逆転したり梢にモテモテだったりと非現実的なところに目はつぶりつつ、インフラエンジニアの読物として楽しく読めてます。