ツナワタリマイライフ

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"Graphic Recorder 議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書"を読んだ

読んだ。

Graphic Recorder ―議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書

Graphic Recorder ―議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書

クローズドでやっている勉強会で友人氏がこれを実践してみたって発表をしていたので読んでみた。

docs.google.com

この本、何が良かったって作者の思想がとても良かったです。

はじめに より

本書が目指す世界、それは、年功序列、事なかれ主義、責任者不在を打ち破り、凝り固まった後ろ向きな空気に流されずに、どんなに難しくて気まずい関係の会議でも、諦めずに思考停止しない世界です。今もこの瞬間に日本の何万と行われている不毛な会議が、グラフィックでの記録によって前向きな思考と関係性に変えられたら少しずつ世界は変わるのではないか。そんな想いをこめて本書を届けます。

グラフィックレコーディング自体は単なる1手法に過ぎません。しかし、その手法が解決しようとしている問題が、未来が素晴らしいものだなと思いました。そしてまさにグラフィックレコーディングは現状の"会議"の問題を解決しうるツールだと思います。

また、おわりに、でもテクノロジーの進化に伴いグラフィックレコーディングの未来について語られていて、

齟齬の生まれる場所は、複雑で曖昧な感情や関係性の中にあり、音声情報だけでは決して読み取れません。情報の的確な整理はできえも、相手の考えに共感して協力しようと信頼しあえる関係性を生み出すような場づくりは難しいでしょう。そうなった時に、未来のグラフィックレコーダーは、正確性が問われる事実関係は機械に任せて、その分浮いた時間で参加者の一歩先の理想を想像しながら新しい「視点」を提供するようなグラフィックを描くことが、今以上に求められるのではないでしょうか。

と、やはりグラフィックレコーディングの持つ価値は飽くまで議論の活発化・明確化だとわかった上で、そのようなツール・手法が今後も必要になっていくという点を示しています。

グラフィックレコーディングとは

会議を図や絵を用いて内容を整理することにより、

  • 一覧性の向上 / グラフィックによる具体化による参加者間の齟齬を最小化する
  • 参加者同士という視点から問題対私たちという構図を強制することによる議論を建設的にする

といった効果をもたらす考え方 / 手法です。

グラフィックレコーディングの本質的な点は上記だと私は感じました。

グラフィックレコーディングのある日常

私は一通り読んだ後、絵・アイコンをすばやく・わかりやすく描く技術を伸ばすかと言うと多分やらないと思います。(今は困っていないので)

そもそも私は会議自体そこまで多くないのですが、例えばチーム内で情報の共有をするときはホワイトボードをよく使います。 特に複雑なアーキテクチャの理解や、運用手順の理解をするとき、図は非常に有益です。そういう意味で普段からグラフィックレコーディングを実践していることになります。

(この本がより一般的・汎用的にしていることを理解した上で)私たちソフトウェアエンジニアはおそらくペンで文字を書くよりキーボードで打ったほうが速いと思います。そのため、実際の私たちの現場では「事前に共有事項を絵、あるいはGitHub Issueに(構造化して)書いておく」「実際に話しながら、ホワイトボードに書いたり、GitHub issueに追記したりして会議を記録する」「会議のゴールが達成できたら終わり」って感じの流れが多いです。

本書の例では絵では描ききれない点は文字で補っていましたが、おそらく速度に限界がある(可読性とトレードオフ?)と思っていて、その点はキーボードによる打鍵での文字情報の記録とうまくコラボレーションできればいいなと思いました。

前述の通り、私は仕事をどう行なうか1人で考えるときにノートとペンでまず書きますし、例えば近くのチームメンバーに何か説明するときに使うこともあります。日常的にグラフィックレコーディングを使っていました。名前を与えるということは大事ですね。

おわりに

グラフィックレコーディングという手法にだけ焦点をあてるのでなく、解決したい課題に強くフォーカスして伝えていた点が非常に良いと思いました。この方法で会議を効果的なものにすると同時に、「この会議はなにを解決するのか?」という点にフォーカスしたり、同様の解決ができる別の手法と組み合わせて使ったりして、日本の無駄な会議が減ることを願っています。