ツナワタリマイライフ

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「あなた」という商品を高く売る方法 キャリア戦略をマーケティングから考える を読んだ

はじめに

同期氏のすすめで読みました。

キャリアをどう進めるかについては「キャリアショック」がとても良かったですね。具体的に社内で、どうやって自分の都合の良いようにキャリアを進めていくかが書かれてあります。

そして今回読んだこの本は、商品を売る「マーケティング」のアイデアを元に、キャリア戦略を自分という商品をどう売るかになぞって解説した本です。

以下、本書で紹介されている内容を少しずつピックアップして紹介してみます。

競争を避けること

ただ、首尾一貫していたのは、「競争を避けて、好きなことをする」ということ。結果的に、これが自分という商品の価値を高めることにつながった(kindle 位置196)

いかに戦わなくて済む領域を探せるか。レッドオーシャンではないブルーオーシャンを探せというわけである。

会社組織にいても、"出世競争"という言葉があるように、戦って上にいくという意識を持つひともいるだろう。自分もそこまでの熱はないが、"勉強し続けないと死ぬ"という気持ちはもっていて、それは周囲のひとに負けない、ついていく、という気持ちがあったのだと思う。

消費者が「より自分らしく、よりワガママに」なったからこそ、あなたを必要とする人は必ずどこかにいる。現代では、細分化されたニーズに特化すれば、競争は避けられるのだ(kindle 位置221)

ニーズが多様化、細分化したことによって、どこにでも当てはまる太いスキルというものはもはや存在しなくなった。どこかにその細かい1部分にマッチする仕事があり、それが自分が得意とする可能性は高い。

バリュープロポジション

① 自分の強み、② ターゲット、 ③ ニーズ、 ④ 自分の仕事、の四つ (Kindle の位置No.515-516)

​このように「 相手が求めていて、 自分しか提供できない価値」 のことを、「 バリュープロポジション」 という。(Kindle の位置No.495-496).

自分の中のバリュープロポジションを育てることにより、戦わずして勝つことが可能になるという。実際に考えてみよう。

とはいえ、自分の強みを自分で見つけるのはなかなか難しい。

あなたという商品の価値を高める出発点は、自分の強みを見極めて育てることだ。 しかし自分の強みは、自分だけでは意外と気がつか ないものである。(Kindle の位置No.579-581)

強みは、先天的な才能と、後天的な技術と知識の掛け合わせでできるという。ここでいう先天的な才能とはよくいう突出的な能力をいう意味ではなく、個性の1つであり、優劣はないという。

「才能」 とは、 個人が必ず持っている資質や性格のことだ。どの資質がいいとか悪いとかいうことではない。 自分が持っている資質 を、 仕事で活かすことができるかどうかが 重要なのだ。

Amazon CAPTCHA

これを参考に自分の強みを探し、育てていくことが重要である。苦手なことを克服するよりは、得意なことを伸ばしたほうがいい。

したいことと好きなこと

最初から自分のしたい仕事はできないし、選べないひとも多いだろう。それでもまず、与えられた今の仕事を好きになることが第一だという。

まずはいまの仕事を 好きになることが、 あなたの強みをつくり、 あなたという商品の価値を高める近道 だ。いまの仕事でできること をいろいろ試してみて、 好きになる部分を見つける。「 これは自分がやりたい仕事ではない」 といった先入観にとらわれず、 その仕事 で試行錯誤してみて、 自分の才能を活かす方法を見つけていくのだ。 そこを起点に自分の強みをつくっていけばいい(Kindle の位置No.681-685)

なおキャリアショックでは、今与えられてる仕事はちゃんとこなした上で、別の自分のしたいことについても勝手にやって声をあげることをお勧めしていた。そのうちそちらに需要がでてきて、本来やるべきであった仕事は他のひとにまわされることになる。

リアルオプション理論

そうはいっても、どうしても好きになれない仕事もある。つまり、新しいことに挑戦する回数が多ければ多いほど自分の好きな仕事に出会える確率は当然あがる。しかし、そう簡単になんども挑戦できるものだろうか。

そのためには、挑戦する回数を増やすこと。そしてリスクをただ回避するのではなく、リスクを上手に管理しながら、リスクを下げる ことだ。リスクを下げれば、 挑戦回数を増やせるし、 あなたの強みを創り出す機会も増える。(Kindle の位置No.847-849).

つまり、許容できるリスクを設定し、その期間内で思いっきり挑戦すること繰り返す。これにより挑戦回数を増やすことと、リスクを最低にすることができる。損切りみたいなもんですね。

仮説思考

たくさん挑戦をして、たくさん学ぶためには失敗し、その失敗から学ぶサイクルが重要。よく言われるPDCAは円環ではなく、らせん状にあがっていくものだと解説されている。

正しい仮説検証は「 円」でなく「らせん」である。まず大まかな仮説を立てて(プラン)、すぐに実行する(ドゥ)。結果を検証し( チェック)、学びをもとに対応策を考え( アクション)、新しい仮説を立てる(新しいプラン)。こうしてらせんを1段上がる。そして 新しい仮説を実行・検証 し、新たな仮説を立てると、らせんを2段上がる。 (Kindle の位置No.1226-1229).

僕は「なんでもやってみる」精神ではありますが、仮説を立ててやっているかというと少しかけている気がします。(もっとピンポイントに、障害調査等は仮説を立てて原因を詰めていきますが)もう少し広い範囲で、何をはじめるときにも仮説/実験を繰り返していきたい。

コンフォートゾーンからの脱出

セブンイレブンAmazonの例をあげて、常に安泰の状態(コンフォートゾーン)にいてはならない、自ら挑戦をしてリスクのある分野に展開していかなければならないと述べている。これはまったくその通りだと思う。(セブンイレブンの紹介で、それをいえばAmazonでは、と思ったら案の定でてきた。)

セブンのトップは「競う相手は他社ではない。お客さまニーズの変化だ」と言っ ている。実際、セブンは他社コンビニと戦っているようには見えない。たとえば他社に先駆けて新サービスを始めるケースが多い。セブンはライバルではなく過去の自分と戦い続けているの だ。その結果、追いかけてくるライバルを尻目に、「 戦わずして勝つ」状態で独走を続けている。(Kindle の位置No.1304-1308).

大きな会社にいると、変わることを恐れるひとは多い。それに、何といってもソフトウェア開発では、ソースコードの変更を恐れ、「動いているうちは触るな」という伝説のような話もある。(実際にある)

ソフトウェア文化に重ねても、容易に変更可能なようにリファクタリングやテストコードを書くことであったり、インフラに関してもInfrastructure as Codeの考え方が当たり前になってきて、何度でも壊して作り直すことが当たり前になってきている。

Infrastructure as Code ―クラウドにおけるサーバ管理の原則とプラクティス

Infrastructure as Code ―クラウドにおけるサーバ管理の原則とプラクティス

僕はInfrastructure as Codeの「アンチフラジャイル」という考え方を知って、これはキャリアも同じだなと思った。つまり、変更に強くなる。変更しても、損失しない。変更するたびに、(フィードバックを得ることによって)強くなる。自分自身の仕事内容も、どんどん変化させていかないといけないし、そのたびに抽象的な考え方を学ぶことで、他分野に活かすことができる。これが1つを極めたら2つめ、3つめを極めるのはより短時間で済む、ことにもつながっているのではないだろうか。

個人が専門分野をつくるときも同じだ。初めて地下水脈を掘り当てるまでは、 勝手がわからないため試行錯誤の回数も多く、1万時間 の集中が必要だ。しかし新しい専門 分野をもう1本掘ろうとすると、経験的に地下水脈がどのあたりにあるか見当がつくので、より短い 時間で地下水脈を掘り当てることができる。3本目は寄り道せずに、さらに短い時間で掘り当てることができる(Kindle の位置No.1427-1431).

そして話はコンフォートゾーンに戻るが、僕が現在猛烈に危機を感じているのは、(ビジネス的に、ではなく)私個人が非常にコンフォートゾーンにいると感じているからだ。会社が潰れる可能性はあるし、会社じゃなくとも自分が所属する部署、本部が経営危機になって異動や、期待しない仕事をさせられる可能性もある。しかし、それでもしばらく数年は今の給与のままで、特にストレスも失敗もすることなくやっていける確信がある。それではいけないと思っている。リスクをとって、自分自身の成長と、周囲やビジネスを動かす経験をしたい。

関連するが、チーム開発における"心理的安全"とは少し違う。私が所属する部署の上司はとても良い上司ばかりだ。否定したり、怒鳴ったり、原因究明のときに心理的に追い込むような聞き方はしないし、マイクロマネジメントもしない。必要な相談は乗ってくれるし、雑談もするし、ビジネスに必要な指示、アドバイスはしてくれる。これにより私自身は心理的安全な状態で仕事ができている。その状態で行う仕事内容が、少し物足りなく、このままでは成長スピードが遅くなってしまう、という危機感を持っている。

mirai.doda.jp

本書ででてくる"強みの掛け算"は堀江さんが言うところの"多動力"だろう。1つのプロフェッショナルならライバルが多いが、それらを掛け合わせるとライバルが減っていき、本書でいう「戦わずして勝つ」ことをやがて実現できるというわけだ。

多動力 (NewsPicks Book)

多動力 (NewsPicks Book)

弱いつながりと強いつながり

自分の商品価値を自分のためにあげていくと、やがてそれは社会貢献につながる。その中で、昔は1企業内や家族でガッチリと絆で結ばれた強い絆がメインな社会的つながりだったが、現代は世の中の多様なニーズに対応するために絶えず新しい発想をしていかなければならず、そのために多種多様な人材を交流する弱いつながりが多くなってきたという。

滅多に会わないSNS上でつながった知り合いから、自分の周囲では誰も話題にしていないような道の情報を得たことがある人も多いはずだ。彼らは自分の周囲とは全く異なる集団に属しているから、知らないことが大きな話題になっていることも多い。つまり弱いつながりは新しいアイデアを得るのに向いているのだ。

本書では自組織では得られない発想を得るために弱いつながりが有効であると述べている。そして弱いつながりから得られる資本、ソーシャルキャピタルを元に社会貢献につなげていく。

弱いつながりといえば、東浩紀の以下の本が記憶に新しい。記事も書いた。

弱いつながり 検索ワードを探す旅

弱いつながり 検索ワードを探す旅

take-she12.hatenablog.com

この本は観光として出会う"弱いつながり"こそがよりよく生きるために寄与するよ、という哲学的内容になっていますが、この偶然の出会いが面白い発想なり、未知の経験を生むと解釈すれば、それはキャリアでも同じことが言えるでしょう。

自分のバリュープロポジションを考えてみる

さて、せっかくなのでここで自分のバリュープロポジションを考えてみましょう。バリュープロポジションとは

  • どんな強みを活かして(自分の強み)
  • 誰の(ターゲット)
  • どんな悩みに(ニーズ)
  • いかに応えるか(自分の仕事)

を埋めることでした。

まずは現職を考えると、最近ではCI/CDの取り組みをしたので

  • ソフトウェア開発におけるCI/CD導入・実践経験の強みを活かして
  • CI/CDサイクルを導入していないチームの
  • CI/CDサイクルを導入したいけど何をすればいいかわからないという悩みに
  • 現状を一緒に考え、必要な施策を立て、支援しながら導入していく

になるでしょうか。まぁ、まだまだ「CI/CDの導入・実践経験」で君はなにができるの?何がすごいの?っていうところを詰めないといけないですし、今時そんなチームいるのかって気がしますね。しかも自分しかできないことでは到底ないですね。

次に自分が今考えているサービスに当てはめてみましょう。

  • スパイスカレーを自ら作ることができることと、ソフトウェア開発の文化をよく知っている強みを活かして
  • スパイスカレーを作りたい人の
  • 自分にあったレシピを探したいという悩みに
  • スパイスを含んだカレー料理のレシピを共同作成できるサービスを提供する

クックパッドでいいじゃん、となってしまうので、悩みをもう少し深堀したほうがよさそうです。ただしカレー×IT両方に通じてるひとはあまりいない気がします。

趣味の音楽についてはどうでしょう。

  • 作詞・作曲・ギター・ベース・ドラム・CD制作・MV制作の経験している強みを活かして
  • 自分で曲が作りたい人の
  • 曲の作り方がわからないという悩みに
  • 曲の作り方のフレームワークを提供する

すでに多くの人がやっとるわいって感じですね。半端にいろいろ手を出してるから初学者への導入支援っていうのは自分の得意としていることなのかもしれない。確かに関心はある。ただこれも自分だけにできることではないですね。

おわりに

マーケティングの考えをベースに自分のキャリアを進める方法、付随する大切な考え方が多くのっている。非常にわかりやすい良書でした。まだ自分自身のキャリアを考えたことがない人は1度読んでみると良いと思います。

僕もそろそろキャリア次に進めます。